ミセス・ブルームに2番目の子供が生まれたとき、彼女はバージニアウルフの小説の主人公にちなんで、オーランドという名前をつけた。小説の中でオーランドは400年を生き、その時代の重要な人物との出会いを通して数々の歴史的、文化的な経験を積んでいく。4世紀も生きるのはありえないにしても、彼女の息子の経歴はまさしく驚きだ。

オスカーワイルドの生涯を描いた映画のレントボーイ役でデビューしてから6年、彼はほとんどの俳優が夢に見るだけで終わってしまいそうな役を次々と手にし、業界の中で類まれな才能をもつビッグな俳優たちと共演した。ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』のエルフの戦士レゴラスから、リドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』の若きG.I.に至るまで、そして『パイレーツ・オブ・カリビアン』ではジョニー・デップと剣を交えたのだ。近く公開される超大作『Troy』でブラッド・ピットと肩を並べギリシャの戦士パリスを演じる前には、『Ned Kelly』でヒース・レジャーの右腕としてアウトローな男に変身。いや、『トロイ』の前にもう1つ、牛乳配達員のボクサーの役で初主演するイギリスのオチャラケドキュメンタリー『The Calcium Kid』がある。

さてさて、オーランドに熱狂的ファン集団がいることは疑うべくもない。思春期に入る前の少女から、結構なお年のおばあちゃままで、女性は彼に夢中にならないではいられないのだ。リラックスした態度や地に足の着いた気取らない魅力は、男からすればエクストリーム系スポーツが好きな26歳のイカした奴に思えてならない。おまけに、かなりスタイリッシュだ。

――ドレスアップするのは好きだよ。僕が今まで出演した映画のほとんどは特別な衣装を着けたわけだけど、キャラクターに入り込むのにはもってこいだよね。僕がファッションに興味あるかって？ああ多分ね。でもそれほどのめり込んではいないよ。特に流行を追いかけようとは思わないけど、服は好きだよ。子供の頃、よくロンドンまで買い物をしに来てたんだ。実はコベントガーデンのポールスミスで働いてたこともあるんだよ。でも最近は･･･何が流行ってるのかを知るチャンスは写真撮影の時が多いね。もう前ほどショッピングには行けないんだ。

――マネージャーが電話してきて、「聞いて。GAPが3人の優秀な監督を迎えてそれぞれ違う種類のコマーシャルを作るキャンペーンをしてるのよ。だから、あなたを推薦しておいたからね！」って言うんだよ。僕は「コマーシャルだって？そういうの自信ないよ。」って返事したんだけど、キャメロン・クロウ（『バニラスカイ』で有名になりつつある監督）の名前を聞いてすぐに、監督と一緒に一日仕事をするだけだとしても意味があるなって思って･･･いい経験になったよ。彼って最高にイカしてるんだ。僕たちが道を走るのにあわせてガンガン音楽をかけたりしてね。トム・クルーズもセットに来てたし（彼はキャメロンに会いに街までやって来ていた。）、僕もキャメロン監督の仕事ぶりを見る良い機会になったと思う。もしまた彼と一緒に仕事ができる機会があったら光栄だね。

――スノーボードには今でも熱中してて、機会がある度にやってるよ。でも最近はなかなかチャンスがなくてね。バンジージャンプができるところを探しに行ったりはしてないからね。「さあ週末だ！この辺にバンジーができるとこあったっけ？」なんて･･･。『ロード・オブ・ザ・リング』の撮影でニュージーランドにいた時に結構夢中になってたから、みんな僕をそんな奴だと思ってるみたいだな。多分、何かを見つけたら真っ先に試してみるだろうけど、わざわざ探してまでやろうとは思わないよ。

――僕のいとこがLAに住んでるし、LAに来れば来るほど、なんてすごい街なんだって思う。一生そこで暮らしたいかって？ロンドンに住む方がいいなあ。僕はロンドンのリアリティーが好きなんだ。LAはいつも休日気分になっちゃうからね･･･いつも天気がいいし。

――イギリスで仕事がしたいと思ったんだ。監督（アレックス・デ・ラコフ）はティーンエージャーの頃からの知り合いだし、それに、バカを演じて僕の違った一面を見せるのに良い機会だったからね。今までレゴラスみたいなカッコイイ系の役を演じて来てるわけだけど、ジミー（注：オーランドが演じる主人公の名前）はもっと分かりやすいキャラクターだよ･･･人間だし。彼はぶらつきの牛乳配達員で、突然ボクシングの世界チャンピオンと戦うことになってしまうんだ。それで彼は、関わるものすべてをろくでもないものにしてしまうハービー（ジミーのプロモーター）みたいな周りの人間たちを信頼してしまうのさ。

――完全に役になりきりたかったから、準備は入念にしたよ。とっても楽しかったんだよ。LAにいるときからトレーニングを始めて、それからオーストラリアで『Ned Kelly』の撮影に行ったんだけど、ずっとトレーニングは続けていたんだ。僕ってちょっとヤセだから、体重をつけてから体を作っていこうと思ってね。トレーニングをしてボクサーっていうものを理解してみたから言えることなんだけど、彼らってほんとにすごいなって感心しちゃうよ。ジミーは凄く強いボクサーじゃなくて、仲間と一緒にボクシングのすべてを楽しんでいるだけ。とは言ってもボクサーとしてトレーニングを積んでるわけだから、それなりの運動神経と体ができてるよね。

――ここロンドンでトレーニングしてた頃かな。撮影開始の3週間前で、それなりにトレーニングもうまく進んでいた時だった。僕は必要なウェイトをつけるために食べて食べて、縄跳びして、ジョギングして、シャドーボクシングとスパーリングをしてたんだ。アーチャーに戦士、アウトローに今度はボクサーなんだなって今までやってきた役を振り返りながら、こう思ったよ。…その時は試合前の体重測定のシーンを撮るために準備してたんだけど、『僕はうまくいくように最大の努力をしなければいけないんだ。ボクシングの技術を身につけて、しっかりとした体格を作らなければ。』って。

――仕事の切り替えで苦労した事はないよ。土曜日にボクシングの撮影を終えて、月曜日にはLAの『パイレーツ・オブ・カリビアン』のセットにいたくらいさ。LAでは剣術の相手をしてくれる人が待っていたから、撮影の合間に彼と剣術のトレーニングをしなくちゃならなかったんだけど。

――彼女たちは素敵さ。嬉しいよ。でも、彼女たちは本当の僕を知っているわけじゃなくて、僕の演じてきたキャラクターに憧れているんだよね。そういう風に反応してくれることは光栄だと思ってるけど、映画のキャラは僕じゃないから。テレビとか雑誌に頻繁に出るようになると、それについてくる反響を受け入れていかなきゃならなくなるんだよね。ユアン・マクレガーが以前に言ってた記事を読んだことがあるんだ。正確に思い出せるわけじゃないけど…。一度自分の身をビッグスクリーンにさらしたら、後は引きずりおろされるだけだって。僕はこうやってステップアップして来られたからラッキーだったと思うけど、どこかで誰かに迷惑がかかるようなことがあったら、彼らが僕を蹴落とそうとするかもしれないし。これって、人生どうせなら楽しみたいっていう考えに関係するよね。僕は自分のウェブサイトを持ってないんだけど、なんだかインターネット上では凄いことになっているみたいなんだ。僕って移動ばかりしているから、世界中のどこにいても、僕宛に転送されてくる手紙があるんだよ。でも同じ場所にそう長くはいないから、それをゆっくり座って読む時間がなくてね。

――今まで、まるでジェットコースターに乗っているみたいなんだ。何とか水面に顔を出していようと努力しているよ。仕事が僕に自信を与えてくれることを光栄に思うし、だからできるだけ誠心誠意取り組むようにしているんだ。今でもロンドンの街を自転車で走ったりしてるんだよ。それに前とほとんど変わらないところで暮らしてるし、友達や家族にあったりもするよ。彼らの存在が前よりも大切に感じられるようになってきたんだ。

――ああ、もちろん。僕が『Ked Kelly』を撮影してたときにADR（対話シーンの置き換え）があったんだけど、ちょうどそのとき僕は髭面で参加できなかった。でも、『仲間はずれになったみたいだよ。なんて最悪なんだ。僕も仲間に入りたい！』って思って、ただ挨拶するだけのために週末にニュージーランドへ行っちゃた。ヴィゴ（・モーテンセン）と一緒にディナーパーティーをしたんだよ。とっても楽しい夜で、かつてのクルーみんなに会ったんだ。

――こういう素晴らしいアドベンチャーに参加できたことは…とてつもなくラッキーだったとしか言いようがないよ。質の高いエピックアドベンチャーに出られたことを光栄に思っているんだ。他に何もしなかったとしても『ロード・オブ・ザ・リング』に出ていたということだけは揺るがないからね。これがあるだけで自信と幸運をもたらしてくれるよね。僕はそれを冷静に受け止めようと思っているんだ。

――物語で描かれた旅のの結論を超えて、エピックストーリーを作るのが好きな人たちが自分の入れ込みたいものをすべて用意してるんだ。まるで途切れることのないプレゼントみたいだと思うよ。---“よし、終わった。あぁ、まだこれもあるじゃないか！”ってね。

――彼がプロジェクトに参加すると聞いてすぐに『どこにサインすれば良いの？！』って感じだったんだ。ジョニーは紛れもなくスター俳優なのに、わざと道から外れて、くだらない仕事を避けているように見えるよね。そんな彼をずっと尊敬してきたから、共演できるチャンスをみすみす失うことなんてできなかったよ。キーラ・ナイトレーとも一緒だったし、彼女はとってもスウィートだから。それにLAとカリブ海で撮影ができたし…

――こんなことを言ってる自分ってさ、多分、どこかで誰かが『なんて奴なんだ！』って言ってるんだろうね。