とがった耳であろうと髭面であろうと、オーランド・ブルームは注目の顔である。
ともかく頑張れとは言わないでもいいか…

彼は未来の顔でありつつ、映画の中ではギャング、エルフ、海賊といった遠い過去の顔を持つ。しかし、ハンサムで類まれな才能を持っているだけではオーランド・ブルームはありえない。いや、これだけの人気が続き、グレガー・ジョーダン監督の『ネッド・ケリー』では名高いブッシュレンジャーになるべくショットガンを放ち、すでに運命づけられたビッグスターになっていくのだから、これはもう神の意思としか言いようがない。

破壊欲と言うのか。熱中型とでも言うのか。ブルームにとってお遊びタイムは苦痛を伴う。25歳の彼はここ数年、背骨、肋骨、鼻、両足、腕、手首、手足の指を数本骨折し、3度も頭蓋骨にひびが入った。

「こんなにたくさんのアクシデントに見舞われる理由の一つは、他の何よりもまったく恐怖というものを恐れていたからだと思うんだ。」と『ネッド・ケリー』の撮影中〈もう少しで膝を負傷するところだった〉ブルームは言う。「自分の限界を押し広げたくて、厄介な状況に自分を仕向けてしまうのさ。」

「恐怖は僕の主食なんだよね…それにこれはケリーギャングにも当てはまると思うよ。」

そしてこれが注目を集め続けるイングランド人が『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の中でレゴラス＝グリーンリーフとしてつけていたエルフの耳を 《コルト32》 に替え、ジョー・バーンとして逃走の人生を送る役を選んだ理由なのだろう。彼はネッド・ケリーの忠実な右腕で、今もなお馬に乗った最も謎めいた男と言って良いだろう。バーンはアウトローになるはずのない人物であった。立派な農場主の家の長男として生まれ、物静かでハンサムで、教養があり、（特に女性たちとの関わりの中では）天賦の巧みな話術を持ち、いくつかの言葉を話すことができた。アヘンを吸い、ネッドの仲間になるまではのことである。

「ジョーはダークホースで、ネッドの激情を鎮める役割だったんだ。」とブルームは言う。「彼はこの物語の中で、炎と氷の間のぬるま湯的な存在だと思う。ひとつ言えることは、彼はネッドのためなら地獄の果てまでも行く覚悟ができていて、実際そうなるんだ。」

ジョーのような女たらしで射撃の名手、数ヶ国語が話せて、アヘンを吸っているというアウトローを演じることは、ワイルドな人生に熱中しているブルーム自身とそうかけ離れたものではないと思える。

「あぁ、そうかも。」と彼は笑う。「ちょうど僕の実際の人生の延長上にあるね！」

彼は冗談を言っているのではない。人生においても芸術においてもオーランド・ブルームは後ろから押されて前へ進むような人間ではないのだ。反アパルトヘイト活動家で作家でもあった父ハリー・ブルームを4歳のときに亡くした後、彼はブリティッシュ・ドラマ・アカデミーでトレーニングするための奨学金を得た。『ロード・オブ・ザ・リング』の役を獲得したとき、大学への入学も果たしていたのだ。それ以来、仕事が山のように押し寄せ続け、ジョー・バーンを得たのである。

「ジョーの遍歴は途方もないんだ。たった21歳で死んだのは、短く劇的な人生に調和したからだといつも気づかされたよ。」とブルームは興奮気味に語る。「ネッドは灼熱の戦士だけど、ジョーはもっと分析的で、僕は彼のそんなところに惹かれたんだ。見所の多い男だったのさ。」

ブルームは映画の撮影中『奇妙な力』を感じたという。「彼らの霊が近くにいるのをみんな感じていたと思うよ。快眠できなかった日がいくらかあったんだけど、ジョーのせいにしてたんだよ。それと、銃撃の最中でも冷静な彼だけど、アヘンの常用は彼の精神を全く歪めてしまうんだ。そんな実情があったから、彼はギャングを守るために幼なじみに向かって引き金を引かなければならなくなってしまう。これがジョーの身の潔白さが失われてしまう瞬間なんだよね。目的は一人の赤の他人を倒すことひとつだから、ほかの事はすべて仲間のためなのさ。」

今年はブルーム自身にとってのチャンスでいっぱいだ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の企画を持ちかけてくれたのはジェフリー・ラッシュであり、今は主役のジョニー・デップにぴったりくっついてバハマで撮影が行われている。

それからイギリスのコメディー『カルシウム・キッド』がある。この中でブルームは、地元で世界チャンピオンと戦うボクサーになる牛乳配達員を演じる。そして『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の最終章になる『王の帰還』は今年の12月に公開される予定だ。

「考えてみると、昔の自分って向こう見ずで命のありがたさを忘れてたんだよね。」と彼は笑う。「でも、銃でめちゃめちゃにしながら荒野を馬で駆け回るほど楽しいことってないよね。この前、友達に言ったところなんだよ。『なあ、僕はエルフにレンジャーにボクサーに海賊、それにアウトローをやってるんだよね。』って。ホント、少年の夢を生きてるよ。」