７７人のキャスト、２５００人のクルー、そして２億ポンドの制作費をつぎ込んだ（２万人のエキストラは言うまでもない）「Lord of the Rings」３部作は今までで最も待ち望まれた長編映画の１つである。
エルフの王子レゴラスを演じているオーランド・ブルーム（２４才）は、ニュージーランドでの１５ヶ月に及ぶ撮影の間、毎日一枚のポラロイド写真を撮っていた。この日記の中で彼は、第１作「The Fellowship of the Ring」の制作風景について、関係者の視点から伝えてくれている。

今振り返ってみると、衣装を着てる僕って変な感じだよ。僕はダーク
ヘアーだし、瞳はブラウンだけど、レゴラスを演じるときはブロンドの
かつらとブルーのコンタクトレンズ、それに尖ったエルフの耳をつけていたんだ。これに慣れるのには苦労させられてね。出来上がった映画を初めて見たときは興奮したよ。オーランドからレゴラスに変身するためのヘアメイクには１時間半かかったんだ。耳をつけてしまってから、もう少し先まで出番はないと言われて、耳をつけたままで睡眠不足を取り戻しに家へ帰ったことも何度かあったんだよ。

僕はこの写真が大好きなんだ。なぜってこれはすべてのシーンの中でも視覚的な荘厳さを実によく示しているから。第１作を初めて見たとき、ピーター・ジャクソン監督がどれだけ効果的にこれらの風景からもう１つの個性を創作しているかが分かったよ。『ロード・オブ・ザ・リング』を映画化するのはピーターの長年の夢だったんだ。彼は、頭の中に彼なりのビジョンを持っていて、可能な限り最終的な出来上がりがそのビジョンに叶うようにと譲らなかった。いつであろうとピーターは野外撮影を主張したんだよ。手前の傘が証明しているように、天気にはほとんどおかまいなしだったね。

撮影がないときはいつもみんなで過ごしたよ。ビリヤードには熱くなったね。エルフ対ホビットの対戦なんかは特に長丁場だったな。ボロミアを演じているショーン・ビーンはチェスの愛好家で、よく撮影の合間にやってたよ。これは、彼がホビットのダブルの一人とチェスに熱中しているところを撮ったものだよ。よく見ると、彼の首のあたりに白いフェースマスクの一部が見えるよね？

エルロンドの娘を演じているリヴ・タイラーとはとても仲のいい友達になったんだけど、初めて彼女を見たときは畏縮してしまってね。撮影が始まる前、僕はヘアメイクのトレーラーに座って、かつらに合わせるためにヘアラインをカットしてたんだ。ちょうど後ろを剃っているときに、リヴが彼女のかつらを合わせるために入ってきて僕の隣に座った。僕たちはその前の晩に一度会っただけだったし、彼女にはちょっとばかり畏敬の念を抱いていたんだよ。僕は彼女のほうを向いて僕のヘアラインについてどう思うかを尋ねてみた。彼女は「なかなかカワイイんじゃない？」と言ってくれたけど、サイドも全部剃ってしまったほうがもっといい感じだと勧められたんだ。もちろん、リヴ・タイラーに言われたことなら何でもしようと思っていたからね。気が付いたらモホーク刈りになってたよ！

『ロード・オブ・ザ・リング』」の撮影は本当に精力を使い果たすものだったけど、
忘れられない経験になったよ。僕たちが撮影をした場所は息を飲むほどの美しい場所で、同時に人里離れた場所だったんだ。山岳地帯での撮影の多くは（ピーター・ジャクソン監督がイアン・マッケラン
［ガンダルフ］に演技指導している、この写真のようなところ）ヘリコプターでしか
行くことができなかったんだよ。最初のうちはイアンのような高名なベテラン俳優と一緒に仕事をすることに怖気ついていたんだ。でも、セットの中ではそのような
ものを感じることはほとんどなかったね。僕たちはまさに壮大な映画に携わる俳優の一団だったんだよ。みんなで力を合わせて飼いならさなきゃならない野生の馬なんじゃないかって時折感じてしまうような作品にね。そういう意味では、まさにみんなでひとつになった経験だったよ。

初めてニュージーランドに着いたときはちょっと圧倒されてしまってまごついちゃったんだけど、すぐに１５ヶ月撮影のあいだ僕の自宅になった家を見せてもらったんだ。すごく興奮したよ。ウェリントンのシータウン、マリンパレードというところにある、ベッドルーム２つ付きのビーチハウスで、すべての部屋にサンデッキがついていて、僕のジープのための電動ガレージもあったんだよ。あの家は僕に
とって素晴らしい心の安らぎの場だったから、今でも恋しいよ。

旅の仲間にはイライジャ・ウッド、ショーン・オースティン、ビリー・ボイド、ドミニク・モナハンが演じている４人のホビットがいるんだ。でもホビットはせいぜい１０６〜７センチしかないから、みんな自分の顔を鋳型に取ったマスクをつけた小人のダブルが必要だったんだ。この写真に写ってるのはイライジャ・ウッドとビリー・ボイドのマスクをつけたダブルの人たちだよ。アラゴルンを演じているヴィゴ・モーテンセンはヘビースモーカーなんだけど、ちょうど彼のタバコをイライジャのダブルの口に押し込もうとしているところさ。

僕たちの中でサーフィンにはまった人は（ほとんどなんだけどね。）オフの日は
大抵、いい場所を探してドライブしたり、波待ちをしたりして過ごしていたんだ。
この写真は（左から）ドミニク・モナハン、ビリー・ボイド、僕、そしてランナーのデイブ・ウィリアムズだよ。ある夜、ビリーと僕は月夜のサーフィンに出かけたんだ。何かが水の中で跳ねたんで、僕たちはてっきりサメだと思ったんだけど、しばらくしてそれがアザラシだと分かったのさ。撮影が終わってみんなと別れるのはほんとに辛かったよ。なぜって僕たちは大の親友になっていたからね。それで「The Fellowship of the Ring」を作り上げた９人の仲間で同じタトゥーを入れたんだ。エルフの文字で９を意味するタトゥーをね。僕のは右の手首の内側にあって、これを見るといつもあの日々を思い出すよ。

レゴラスの特技の一つは弓だから、僕のシーンのほとんどは弓と矢を操ることを要求されたんだ。何度もリハーサルを重ねたのに、このシーンはOKが出るまでに６時間もかかってしまってね。途中で弓を壊してしまったりして、心身ともに疲れたよ。このシーンが最終的に使われるかどうかは分からないんだけど。

この映画はとってもフィジカルで、演じる側としては体力を消耗するものだったよ。撮影に何日もかかる戦闘シーンもいくつかあったんだ。この写真のようにブルーバックで演じることも多かったんだけど（これは後からコンピューターで編集された映像が加えられるんだよ。）、ピーターは僕たちが実際にできることは少しでも多くやってくれと言った。僕たちには一人一人トレーナーがついていたんだけど、僕がいちばん助けを必要としていたと思うよ。僕の役柄の運動能力の高さもあるけど、僕は４年前に背骨を折っていて今でもまだ痛むんだ。でも自分でできることはすべて自分でやったよ。スタントダブルの人はいたけどね。彼が僕にどうやって動いたらいいかをデモンストレーションしてくれて、それを真似して覚えたんだ。
いちばん素敵だなと思ったことは、僕に剣術の指導をしてくれたボブ・アンダーソンがエロール・フリンも教えたことがあるってことだよ。